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アルコール依存症について

アルコール中毒は知っているが、「アルコール依存」とは耳慣れない言葉だと思われる人がいらっしゃるかも知れません。ほかの薬物中毒同様、「アルコール中毒」の研究が進むにつれて、もはや「アルコール中毒」だけの概念では、捕らえきれない重要な問題を多く含むことから「アルコール依存」という言葉が使われるようになりました。

例えば、水俣病を代表とする「有機水銀中毒」や農業従事者が罹る各種の「農薬中毒」など、これら有機水銀や農薬は、自殺願望者以外に好んで摂取する人はおりません。しかし、アルコールは自ら好んで飲まれるものであり、反復飲酒の結果、「アルコール中毒」という大変困ったことになっても、「止めようにも止められない」事態に陥ることから、明らかにほかの薬物中毒との違いが分かってもらえると思います。しかし、アルコール自体は、薬学的には一般的なタバコのニコチン、コーヒーなどに含まれるカフェイン同様、れっきとした薬物です。
また、かなり一般的ではありませんが、アヘンやモルヒネ、幻覚作用の強いマリファナやLSD−25などと同じように、その薬理作用による心地よさをまた味わいたいという欲求から、繰り返し使ってしまうという、いわゆる「精神依存」が形成される強い部類に入るものです。
飲酒は未成年を除いて法律で禁じられてはおりませんが、社会的にも医学的にも許される限度というものがあります。

永年の飲酒、或いは比較的短い大量飲酒の結果、アルコールへの強い精神依存の状態になっている人は、麻薬の虜になった人と同じように、アルコールをどうして手に入れるか、また実際に飲んで酔う以外に頭になく、1日の生活がアルコールを中心として回転するようになり、次第にアルコールに溺れる結果になります。猿を使った実験でも、水とアルコールの出る蛇口を別々にして猿に与えたところ、最初は、水とアルコールを交互に試すように飲んでいた猿が、次第にアルコールだけを好んで飲むようになり、仕舞いには餌も食べず、アルコールだけ飲む生活に陥っていくという実験結果があります。その後、アルコールの出るのを止めたところ、人間と同じように退薬(離脱)症状(禁断症状のこと、最近はあまり使われない)が出現するのです。

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普通、「中毒」は、その原因となるものを止めたら治ると思われています。有機水銀や農薬はひとたびその害が分かったら、二度と口にする者はおりません。しかし、アルコール中毒は、アルコールが害だと分かっても、なかなか止められないのが実情です。このような人間とアルコールの関係は、もはや「有機水銀中毒」などと同じ範疇で扱えないということが、分かっていただけたと思います。それゆえに、この関係は「アルコール依存」もしくは「アルコール精神依存」と呼ばれるべきものです。

不眠症になった人が、病院で睡眠薬を処方してもらい、服用しているうちにだんだんきかなくなり、元の効果を得るためにどんどん量が増えてくるという話は、よくご存じだと思います。これを「耐性の形成」といい、アルコールもこの「耐性」が大変生じやすいものです。 耐性の仕組みを簡単に説明すると、アルコールが体内に吸収され、大脳に作用し酩酊を引き起こしますが、一方、一部の神経は抑制して正常な状態に保とうとして興奮状態になります。つまり、耐性が生じるということです。アルコールが連用されていると、潜在的に興奮状態が増幅され続くことになり、アルコール依存の状態になった人が、なにかの事情でアルコールを口にできなくなった場合(アルコールの血中濃度の低下、と表現されます)、神経系全体の過剰興奮(潮のようにアルコールがひいたために、興奮した神経がとり残された状態と表現したらいいでしょうか)という形で、さまざまな退薬症状が顕われてきます。この状態を「アルコールの身体依存」が形成されている、と表現できます。身体依存と退薬症状とは、表裏の関係にあることが分かるかと思います。また、「退薬(離脱)」の意味も理解できるかと思います。アルコール依存のキ−ポイントは、まさにこれらの精神依存と身体依存にあるわけです。

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